医師求人まとめの考え方
仲介を否定せず、
採用コストの行方を考える。
求人票の給与だけを見ない。その採用に、いくらのお金が動き、誰のために使われているかも知っておく。
1. 仲介会社も、日本の医療を支える担い手です
私たちは、職業紹介事業者を一律に悪者とは考えません。候補者の探索、情報提供、面談の日程調整、希望条件の整理、地域を越えた採用支援など、適切な仲介が果たす役割があります。医療機関だけでは出会えなかった医師との縁をつくり、日本の医療提供体制を支えてきた担い手の一つです。
一方で、支援の中身や実態に見合わない紹介料、自由な採用・転職を妨げかねない違約金や契約条件が問題になることもあります。大切なのは「仲介か直接か」を善悪で分けることではなく、受けるサービスと支払う費用が釣り合っているかを確認し、仲介、直接応募、公的機関、医師会などから選べることです。厚生労働省も手数料率や離職状況の開示を進めています。厚労省資料[5]
2. 医師の紹介料はいくらで、どこへ行くのか
たとえば年収1,500万円の医師を手数料率20〜30%で採用すると、医療機関には300〜450万円の紹介コストが生じます。このお金は通常、医師本人ではなく医療機関から紹介会社へ支払われ、候補者探索、広告、営業、面談・日程調整、条件確認、システム運営、人件費、事業利益などの原資になります。ただし、各社が受け取った手数料を何に何円使ったかまでは、公表資料から一律には分かりません。
医療費との関係は、誇張せずに見る必要があります
紹介料は、患者へ「紹介料」として直接請求される診療報酬項目ではありません。しかし、医療機関の収入は診療報酬を中心に、公費、保険料、患者負担などで成り立っています。紹介料も人件費や設備費と同じ経営費用として、その限られた収入から支払われます。そのため、紹介料負担が大きくなれば、医療従事者の待遇、設備投資、医療提供体制へ回せる余力を圧迫し得ます。
令和3年度の医師紹介手数料181.3億円を、同年度の国民医療費45兆359億円と単純に比較すると約0.04%です。紹介料総額[3]国民医療費[4] ただし、これは規模感を示す比較であり、「国民医療費の0.04%が紹介会社へ直接支払われた」という会計上の内訳を示すものではありません。医師以外の看護師等の紹介料や、非常勤・短期契約など、この数値に含まれない費用もあります。
3. 仲介を使わないなら、その余力を働く医師へ
直接採用だから、紹介料の全額がそのまま給与へ上乗せされる、という意味ではありません。採用広報、選考、労務管理など、医療機関側にも直接採用のコストがあります。それでも紹介料が発生しないことで余力が生まれるなら、その一部を報酬、採用時の特典、面接交通費、赴任・住宅支援、研修機会、勤務条件の改善として、採用される医師へ還元することを私たちは推奨します。
採用コストが下がったのに待遇が同じで、その余力を医療機関だけが受け取るのであれば、直接採用が目指す相互利益は成立しません。働き手への配慮や採用努力を欠く姿勢は、いずれ医師から選ばれにくくなります。
日本の医療を支えるのは、診療の現場だけでも、経営・採用を担う中枢だけでもありません。仲介会社を含むすべての担い手が提供価値と費用を明らかにし、医師と医療機関の双方が利益を得られる関係をつくることが、私たちの目指すところです。
参考文献
- [1] 厚生労働省「医療分野の職業紹介について(求人事業所調査⑥)」— 医師1人の採用に支払った手数料平均276.6万円(最終確認 2026年9月24日)
- [2] 厚生労働省「有料職業紹介事業者:紹介件数、就職件数、手数料額、手数料率」— 医師の手数料額中央値253.5万円、手数料率中央値20%(最終確認 2026年9月24日)
- [3] 厚生労働省「職業紹介・労働者派遣について」— 令和3年度の医師紹介手数料総額181億3,231万7千円(最終確認 2026年9月24日)
- [4] 厚生労働省「令和3年度 国民医療費の概況」— 45兆359億円(最終確認 2026年9月24日)
- [5] 厚生労働省「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」(最終確認 2026年9月24日)
- [6] 厚生労働省「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」(最終確認 2026年9月24日)
- [7] 人材サービス総合サイト「職業紹介事業所検索」(最終確認 2026年9月24日)